本事業は第Ⅰ期から第Ⅲ期までの継続プログラムです。今回の事業はその第Ⅱ期です。 Ⅲ期に及ぶ事業の目的は、項目第4項で示した以下の3つが上げられます。
1)インクルーシブダンスの普及
2)コミュニティダンスの普及
3)深く学び合う継続性のある交流
イギリスでは公教育の中にアートが入っています。日本でも図工、音楽として入っています。 しかし、イギリスの場合、アート担当教員は、図工や音楽というカテゴリーに縛られず、 演劇やダンスなどの身体表現に絵画や音楽などをミックスし感性や創造力の育成に取り組んでいます。 その背景には、多国籍、多宗教、多言語という異文化が共存する国であり、 貧富の差が大きい事による対個々人の理解と共存が難しい社会である事が上げられます。 アートを用いる目的は、これらの社会的な背景を持ちながら様々な人たちが互いに尊重しあい、 理解し合い、共存していく社会を構築するためです。
アートには、個人の尊厳を高め他者を尊重する生き方を身に付けていく力があるのです。 私達は、アートの中でもダンスという身体表現をあつかっている団体です。 ダンスは非言語であることが最大の特徴です。 そして、自閉せずしっかりと相手に向き合い、コミュニケーションする事でしか成立しません。 それは深く相手を理解することにもつながります。
今回訪問した2カ所はともにダンスを通して個々が持っている創造力と、 他者とのコミュニケーション能力を高め、その上で、自分自身への自信や尊厳を高めていく活動をしている拠点です。 また、ダンスを身体能力の秀でたごく一部のダンサーの専有物にするのではなく、 誰にでも門戸を開き、誰もがダンスを楽しみ、作品に出演する機会を提供しているところでもあります。
今回訪問した2カ所は、ともに拠点となる自前の会館を有し、 施設としては、練習室、道具制作室、録音室、ダンス公演のためのホール等を有しています。 (これは私達法人と大きく異なる点です。)
これらの施設を有効に活用するための様々なダンス・身体表現のプログラムが用意されています。 プログラムは、乳幼児と保護者対象、幼児・小学生対象、中学生・高校生対象など年齢別のものから、 ダンスの目的により、モダンバレエ、コンテンポラリー、ヨガ、アクロバティックなロープダンス、 ヒップホップなど様々です。
共通しているのは、全てのプログラムではありませんが、 その根底には、「誰もが参加したければ参加可能」という事です。 私達の法人のように障害者を含むものも当然あります。 近隣地域の人たちが、自分の興味関心に沿って、さまざまなプログラムに参加できるようなプログラム設定がされているのです。
「誰もが参加できる」ということは、インクルーシブ(全てを含む、包括的)なのです。 日本と違い、多国籍・多宗教・多言語の国なので、様々な人たちが集まって来ています。 当然肌の色も多様です。そして、その中に障害のある人も自然な形で入り込んでいます。
チキンシェッドシアターカンパニーのダンスダイレクターであるクリスは 次のようなエピソードを話してくれました。 「ある小学生対象のダンスクラスに、英語が堪能ではない子どもが入ってきました。 彼女の第一言語 はスパニッシュでした。他の多くの参加者は当然英語を話します。 逆にまだ他の言語は理解していません。ここで交流が始まりました。 スパニッシュの簡単な単語を彼女がみんなに伝えています。 そしてみんなは、覚えていきます。 そして簡単なスパニッシュのことばを用いてダンスを創っていきました。
これは、それぞれの言語が違うことから学び愛尊重し合うことができる証明です。 人間はどうしても同じ者・似た者が集まろうとします。 その方が安全だからです。ですが、違いがあるからこそ学びあえることもあるのです。」 違いがあるからこそ学びあえる。彼女の言葉が私の印象に深く残りました。
ダンスシティのシンポジウムでは、北部イングランドにおいては 障害者がメンバーとして入り、ダンスを楽しんだり作品を上演したりする活動は、 まだまだこれからであることが参加者より報告されました。 ダンスシティを活用しているダンスグループは数多くあるが、 障害者が含まれているグループは2つ程度であるということも分かりました。 それは、まだまだ活動自体が認識されていないことや、 活動の意味が伝わりにくい事から来ているという背景があることも分かりました。
第Ⅰ期、第Ⅱ期の相互交流を終え、 私達はインクルーシブダンス・コミュニティダンスの普及に向けてのヒントを得ることができました。 私達は交流先のような拠点となる施設を持ちません。 しかし、私達にできることが多くあることが分かりました。 それは、ワークショップの充実です。
現在仙台市内及び山形県高畠町、福島県本宮市・郡山市で定期的なワークショップを開催しています。 これらのワークショップの内容を少しずつ増やしていくことが、 私達の目指す方向に合致していくと考えています。 スタッフの数も限られていることから、一気に増やしていくことは難しいのですが、 徐々に計画的に増やしていくことを考えていきます。
等が考えられます。
これらを徐々に整備していくことで、地域に根ざしたダンスを展開していくことができると考えました。 そして、当然のこととして、年齢による種別はありますが、 そこに障害のある人たちが参加できるワークショップを行っていきます。
インクルーシブダンス・コミュニティダンスの先進国イギリスにおいても、 これらのダンスが認識され普及するまでには多くの時間を必要としていました。 ここ日本においてはまだまだその初期段階です。 インクルーシブダンス・コミュニティダンスという言葉自体もまだまだ普及していません。
地道で継続的な取り組みが、急がば回れではありませんが、確実な広がりを持たせる道だと考えています。